―― では、あらためて、なぜ、若い人たちはソーシャルメディアを使うのでしょうか。
濱野 若い人たちというのはまだまだ人間関係に敏感で、ソーシャルメディアを使って微妙な人間関係の距離を測りたくなるような状態に置かれているから、ですね。もっと身も蓋もない言い方をすれば、それは若い人たちこそが最も激烈に恋愛をするからです。
今の日本とか世界の教育制度だと、だいたいみんな、大学に入るころに恋愛への関心・関与のピークがやってくるわけですよね。その渦中にある10代、20代にとっては、「いかにあの子のマイミクとなるか」とか「あの子と相互フォローになるか」とかが非常に重要な関心事であるわけです。あ、今、私はかなり男性目線から言っちゃってますが。
―― 「寄り道・勉強編」が、いつもの「人生の諸問題」になりましたね。
小田嶋 仮にナンパ目的じゃなくても、単純にあの学生のときって、人が行ったり来たりが多くて、そこで取り残されると、完全な村八分になっちゃうから、焦るわけですよ。
SNSは本質的に「青春」「思春期」のもの
濱野 はい、そうなんです。恋愛に限らず、若いときというのは、まだ仕事もしてないし、まだまだ人生もいろんな可能性がある「何者でもない人」ということで、逆にいえばアイデンティティが確立されていない。だから、周囲の人たちとの関係性が、すごく自分を規定してしまうし、自意識過剰になりがちです。だから若いときというのはイジメみたいな問題が深刻化しやすいわけです。そういう人間関係がすごく重要な局面においては、ソーシャルメディアがすごく大事な情報源になる。つまりソーシャルメディアというのは、本質的に「青春」とか「思春期」のものなんですね。
―― その一方で、「社内SNS」みたいなものもありますよね。
濱野 一時期、会社内でSNSをやって、社員同士で情報共有を促進、みたいな話が流行ったんですが、たぶん日本では、ほとんどの会社でもう社内SNSはあまり機能していないはずです。それはなぜかというと、会社というのは、「こいつとこいつは上司と部下だ」とか、「こいつは下っ端だけど、所属は別だから俺の部下じゃない」とか、役割関係がはっきり規定されていますから、別に微細な人間関係の距離感とかを読む必要がないわけです。
小田嶋 社宅ですら、部長のところで盛りそばを食っているのに、ヒラの我が家でカツ丼を食うわけにいかないだろう、みたいな規定があったからね。
濱野 そういうことなんです。でも、SNSのようなソーシャルメディアというのは、基本的に情報のやり取りは対等目線で行われるわけですよね。それが社内SNSでは不可能なんですよ。すでに役割関係や上下関係がはっきり規定されているから、いざフラットにつきあおうといっても、無理がある。自分の趣味とかを、いちいち社内で公開したり、上司に情報を気さくに教えてあげる、というのは、とてもじゃないけどやっていられませんよね。
―― それはとても想像しにくいですね。
濱野 つまり社会人のように、人間関係の意味付けがはっきり規定されている状態では、SNSって必要ないんですよ。リアルの空間では、上司と部下といった役職が、すでにある種「ソーシャルグラフ」の役割を果たしているわけですから。
コラムニスト 小田嶋隆氏
小田嶋 だから、携帯メールやミクシィの普及度みたいなのは、実はおっさんよりおばさんの方が高いんではないか、と俺は思いますね。おばさんたちって結構みんなミクシィに入っているし、携帯メールもばりばり使っているし。
―― ママ友、趣味友、ジム友、と、水平関係でいろいろ交流がありますね。
小田嶋 そう、お父さんよりはお母さんたちの方が友達が多いんですよね。パパは利害関係のある人間としか付き合ってないから、友達がいないんですよ。
濱野 まったくそのとおりですね。今の日本の企業社会では、男の人たちは結局、ソーシャルメディアのコミュニケーションからは遠ざけられてしまうんですよね。
若い人こそがソーシャルメディアを使う理由を、また別の形で言い換えれば、それは「敬語を使わない関係」こそがソーシャルメディアにハマりやすいということなんです。ソーシャルメディアというのは個人と個人がフラットに結びつく場ですから、いわゆる「タメグチ」のコミュニケーションこそが一番マッチする。
でも、敬語を使って話すような相手だと、別にいつも仲良くしているわけじゃないし、敬語なりの適度な距離感だけで付き合えばいい話だから、ミクシィのようにどっぷりと互いのコミュニケーションを可視化させる装置は必要ないんですね。ソーシャルメディアを使いこなせるリテラシーというのは、実はこうした普段の人間関係のあり方が規定しているのであって、別にデジタルネイティブが情報社会に適応しているとか、そういう話ではないんだと思っています。
「企業社会の男の人はSNSのコミュニケーションからは遠ざけられてしまうんです」:日経ビジネスオンライン (via kanose)(via yaruo)
